山形県の入試問題を読んでいると、駅伝のグラフ、氷とロウの違い、留学先での失敗、身近な標識の変化——教科書の外にある話題が、あちこちに顔を出していました。
英語・数学・理科・社会の4教科の中から、特に引き込まれた4つの問題を紹介します。
1英語|「間違えることが、学びになる」——アメリカ留学で見つけた気づき
英語では長文問題の題材に注目しました。
大問4は、一人の中学生がアメリカでの失敗を通じて何を学んだかを追いかける、長い物語文でした。
健さんは、アメリカのホームステイ先から現地の学校に通い始めます。
クラスメートの話す英語が速くて理解できず、話しかけられずにいたある日、ホストファミリーのEmmaとその父から、「間違いを恐れなくていい、コミュニケーションで大事なのは完璧さではなく理解し合うことだ」という言葉をもらいます。
少しずつ発言する勇気を持てるようになった健さんは、やがて「間違いは、自分たちが学ぶための助けになる」と気づくのでした。
最後の設問は、本文全体の流れを踏まえて出来事を並べ替えたり、健さんとALTの先生との会話の空欄を埋めたりするものでした。
山形県教育委員会の結果報告書によれば、文章全体の流れをつかむ力を問うこの設問は正答率が低く、課題として挙げられています。
一つ一つの文を訳せても、物語がどう変化していったかを俯瞰して捉えるのには、また別の力が必要なのかもしれません。
失敗を恐れて動けなかった健さんが、少しずつ言葉にする勇気を持てたように、間違いは学びを止める理由ではなく、学びを進める材料になり得ます。
2数学|追いつくのは何秒後か——駅伝のタスキがつなぐグラフ
数学では、複雑だけど面白い一次関数の問題が出題されました。
大問3、駅伝競走という身近な場面から、動き続ける2人の選手の距離を追いかける問題です。
A中学校とB中学校が、5区から6区へタスキをつなぐ場面が舞台。
6区に入ってからの2校の選手の位置関係を、時間の関数として捉え、途中で一方がもう一方に追いつく瞬間までをグラフに表します。
複数の選手が入れ替わるたびに、進むペースが変わり、グラフの傾きも切り替わっていきます。
山形県教育委員会の結果報告書によれば、このグラフの特徴を読み取り、状況を考察する設問は正答率が低く、課題として挙げられています。
公式に数字を当てはめるだけでは対応できず、「今、誰が走っているのか」という状況の切り替わりを正確に把握し、その都度グラフを描き直す必要がある問題です。
駅伝のタスキがつながる瞬間、グラフの傾きもまた切り替わる——目に見える動きを、目に見えない線に置き換える。それも、数学の持つ力の一つなのかもしれません。
3理科|氷は水に浮くのに、ロウは沈む——「固体」の中身を見比べてみると
理科は、決まった公式を覚える教科だと思われがちです。
ですが大問5は、「氷は水に浮く」という私たちがよく知る現象を、あえて裏切る実験がテーマでした。
慎也さんは、新聞で見た氷山の写真をきっかけに、固体のロウも液体のロウに浮くのかどうかを実験で確かめることにします。
液体のロウを冷やして固めると体積が減り、質量は変わらないため、固体のロウは液体のロウより密度が大きくなります。
実際に固体のロウを液体のロウに入れてみると、氷とは逆に、沈んでしまいました。
私たちは「氷は水に浮く」という日常の体験から、固体は液体に浮くものだと思い込みがちです。
ですが、水(氷)はむしろ例外で、ほとんどの物質は固体になると体積が縮み、密度が大きくなるため液体の中では沈みます。
一つの身近な体験を、つい全体のルールだと決めつけてしまう——そんな思考のクセに気づかせてくれる問題です。
「当たり前」だと思っていたことが、実は例外だったと分かる瞬間があります。
氷とロウ、同じ「固体」という言葉でも、その中身はまったく違うのかもしれません。
4社会|温泉口の看板に、英語が増えた理由
社会で注目したのは大問6、山形県内のある交差点の標識が、なぜ変わったのかを考えさせる身近な出題です。
東根市内にある「東根温泉口」という交差点の標識は、かつて日本語のみの表記でしたが、のちに”Higashine Onsen Ent.”という英語表記が加わりました。
この変化の背景にはグローバル化の進展があると考えられ、それを確かめるにはどんな資料が必要か——という設問です(山形県の資料としては、県内の外国人宿泊者数の推移が適切とされています)。
一枚の標識の変化から、その裏にある社会の動きを推測し、それを裏付けるにはどんなデータを見ればよいかを考える。
知識を答えるだけでなく、資料の選び方そのものを問う出題でした。
見慣れた標識も、よく見ると時代の変化を映しています。
通学路や旅行先で見かける看板に、ふと目を留めてみると、新しい発見があるかもしれません。
駅伝のグラフ、氷とロウの違い、留学先での失敗、身近な標識の変化——どれも教科書の外にある話題です。
入試問題は、そうした日常の断片を、教科の視点でもう一度見つめ直すきっかけをくれているのかもしれません。
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