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勉強お役立ちコラム
- 2020.07.30
- 教室長コラム
【香川】瀬戸の夕凪をご存知ですか?
本格的な夏がやって来ましたね。今年は夏なのにマスク着用という特殊な状況ですから、いつも以上に熱中症にはお気をつけください。
ところでみなさん、「瀬戸の夕凪」という言葉をご存知でしょうか。今回は、夏の瀬戸内海の風情と情緒を表すこの言葉を、中学校の理科と社会の知識で解説していきたいと思います。
●まずは理科:「凪」について
「凪」とは、その字が示すように無風状態のことです(「風」に「止」と書きますね)。
一般に、空気は温かくなると軽くなり、冷たくなると重くなります。また、地面は海面と比べて温まりやすく冷めやすい性質があるため、日中は地面のほうが温かく、夜は海面のほうが温かくなります。温かい空気が上昇していくと、空気の流れが生まれ、そこに別の空気が流れ込むことによって風が生まれます。天気の良い日の日中に海から吹く風を「海風(うみかぜ)」、夜になって海に向かって吹く風を「陸風(りくかぜ)」といいます。この海風から陸風に風向きが変わるときに生まれる無風状態が凪です。
周囲を山に囲まれているためにもともと風が弱い瀬戸内海では、朝夕の凪の継続時間が長く、これを称して「瀬戸の夕凪」といいます。
●つづいて社会:瀬戸内の気候
瀬戸内海は、北を中国山地、南を四国山地に囲まれているために、海からの湿った風がさえぎられ、上空に雲が発生しにくくなっています。瀬戸内海に面した各県はどこも日照時間が長く、降水量が少ないのが特徴です。年間を通して温暖で、太平洋側や日本海側と比べて波も静かなため、船の往来に適しており、古来より九州から畿内(京・大阪)にいたる海上交通にとって非常に重要な役割を果たしてきました。
蒸気機関やエンジンなどの動力機構が発明されるまで、船は風の力、潮の力、そして人の力で動かすしかありませんでした。ですから、凪の時間帯は船を動かすことができません。そこで、良い風・良い潮の流れが来るまで港に停泊する「風待ち」「潮待ち」の風習が生まれました。船乗りが立ち寄ることでそれぞれに港町が発展し、現在の都市の原形となっていったのです。
●瀬戸の夕凪が生み出す島並の景色
瀬戸内の夏はとにかく暑いです。夕方に風が止むことで、その暑さはさらに増します。
しかしその瞬間、海面は鏡のようになり、そこに夕日が写り込みながら島々の向こうに沈んでいくさまは、まさに絶景といえるでしょう。徐々に暗くなる波間を、小さな船がゆっくりと進んでいく様子はとても風情があって、短歌や俳句、詩などを思わず詠んでみたくなる、そんな光景です。小柳ルミ子の往年の名曲『瀬戸の花嫁』も、そんなふうにして作られたそうです。
この夏、夕方に海辺を散策して、瀬戸内海の美しさに触れてみるのも良いかもしれませんね。